平成23年度研究奨励金募集研究課題の説明
| 課題1: |
低環境負荷化学プロセス実現のための触媒に関する研究 |
現在、地球環境問題への取り組みが化学企業にとっての重要な責務になっており、この責務を果たすための一つの手段として、化学企業は製造プロセスにおける環境負荷の低減に積極的に取り組んでいる。
化学プロセスの環境負荷低減において、高機能な触媒の開発は以下の観点から非常に重要である。
1)反応選択性の向上による廃棄物(副生成物)削減
2)反応の温和条件化による消費エネルギー削減
3)反応のプロセス改良による廃棄物、消費エネルギー双方の削減
4)触媒の高性能化、高活性化による触媒使用量削減
5)バイオマスをはじめとする種々の環境負荷低減可能な原料への転換
このような触媒の開発には、たとえば、種々の金属や素材との組み合わせによる複合化や特殊な反応場の利用などの新たな発想が求められるが、実現できた時には、環境負荷のみならず、コストや生産性等の経済的視点でも有用な技術となることが期待できる。
そこで本課題では、現在、化学企業において化学製品製造のために実施中、あるいは将来実施されると想定される様々な化学プロセス、例えば基礎化学品製造、機能化学品製造等において、コスト等の経済性も考慮しながら、環境負荷の大幅な低減を実現するための触媒の提案をターゲットとするテーマを募集する。日本の化学産業の競争力強化につながるような、画期的かつチャレンジングなテーマを期待する。
なお、本研究課題では、研究計画作成の際「環境負荷低減に繋がる視点」を明記して下さい。
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課題2: 有機電子材料の集合体構造と電子特性の関係の計算科学的研究
近年、有機EL(エレクトロルミネッセンス)を始め、有機太陽電池や有機トランジスタといった有機薄膜デバイスに用いられる機能性有機電子材料の開発が急速に進んでいる。これらの有機材料には、低分子系から高分子系まで幅広い種類の化合物があり、それらの電子特性は薄膜中の分子の積層や配向の仕方により大きく変化する。有機材料の分子集合体としての構造を特徴づけ、更に分子間のエネルギーや電子の移動現象と有機材料の構造との関係を解析する方法の確立が求められている。
実験的には結晶性の高い一部の低分子系を除いては有機材料の構造を明確に決定することは難しく、結晶・非晶が混在する一般の材料ではX線散乱、電子顕微鏡、AFM(原子間力顕微鏡)によりランダムな中に短距離の部分的な周期構造が見出される程度である。このため、有機薄膜材料の電子特性と薄膜中の分子構造との関係を理解する方法として計算科学的手法がある。
このような観点から、本課題では、有機電子材料の集合体構造と電子特性を解析する計算科学的アプローチに関する研究を募集する。具体的には、材料における分子間の配置、配向など結晶性や非晶質性状態の構造予測、分子間の電子移動やエネルギー移動といった特性発現の理論解析などの要素技術を提案頂き、最終的には、結晶・非晶の複雑な構造をとる有機電子材料の電子特性を推定する総合的な解析手法の提案を期待する。実用上必要とされる特定の電子特性を計算するために考案した新しい手法や、有機電子材料を開発する上での理論に基づいたユニークなアイデアが含まれていれば、さらによい。
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課題3: エネルギー分野における新しい素材・部材・機能の創出に関する研究
持続可能な地球環境のため、全世界の温暖化ガス排出量を大幅に削減することが求められている。本課題では、「エネルギー分野における新しい素材・部材・機能の創出に関する研究」を募集する。特に将来、我が国での活用が期待される太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーとそれを推進する技術の提案を期待している。その具体例の一部を以下に示す。
・ 有機系/薄膜系/化合物系/量子ドット系などの太陽電池に関する研究
・ 水の光分解など太陽光を利用した研究
・ 太陽熱発電に関する材料の研究
・ その他の再生可能エネルギーに関する研究
・ 二次電池やキャパシタなど蓄電に関する研究
選考では「環境や安全への配慮」が十分になされており、「応募者自身のオリジナルな発想に基づく、ユニークな提案」であることを重視する。すなわち、既知の方法で確実な成果が予想される研究よりも、応募者本人のアイデアによる挑戦的な提案で、将来の新化学の芽になることが期待できる研究を優先する。
課題4:環境分野に貢献可能な新しい素材・部材・機能、新技術の創出に関する研究
持続可能な人類社会を構築・維持するためには、地球規模での環境問題に対応することが重要かつ喫緊の課題となってきている。本課題では、「環境分野に貢献可能な新しい素材・部材・機能、新技術の創出に関する研究」を募集する。
具体例としては、化石燃料の大量消費に伴って発生し、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素の削減、固定化、有効利用に関する研究、トータルライフサイクルの観点から環境負荷低減に貢献する材料の研究、水資源対応技術等があげられる。
二酸化炭素の有効利用に関しては、化学的に変換する新規な反応、あるいは効率的な反応の研究を募集する。特に次のような観点からの提案を期待している。
1.全く新規な化学反応による二酸化炭素の変換
2.反応自体は既知であるが、新規な触媒により効率が著しく向上するもの
選考では「環境や安全への配慮」が十分になされており、「応募者自身のオリジナルな発想に基づく、ユニークな提案」であることを重視する。すなわち、既知の方法で確実な成果が予想される研究よりも、応募者本人のアイデアによる挑戦的な提案で、将来の新化学の芽になることが期待できる研究を優先する。
課題5:賢−マテリアル実現のための基礎的・基盤的研究
電子機器・自動車・航空機、或いは環境・エネルギー分野等の産業に対する高機能・高性能部材の開発と供給において、我が国は世界有数の地位にある。しかし、それに必要な元素資源の多くは輸入に頼っており、日本の化学産業の基盤強化のためにこの状況を打破する必要がある。この目的のため、当協会では「賢−マテリアルWG」を立ち上げ、検討を続けてきた。ここで「賢−マテリアル」とは、「資源・環境・エネルギー面で満足できるマテリアル」を意味し、理想的には「希少あるいは貴重な元素を含まない材料で、環境面の問題がなく、またエネルギー節約にも貢献する材料」である。
本年、このWGでは「希少元素代替材料と代替技術の創製に関する調査研究」に取り組んでいる。ここでのねらいは価格高騰を続けている「希少元素そのもの」を「ありふれた元素」で単に置き換えることではない。希少元素あるいは貴重な元素を含む材料が発現している“機能”に注目し、その機能を希少/貴重元素を含まない材料で同等以上の機能を実現する「賢−マテリアル」の研究開発を目指している。例を挙げれば、希少元素であるインジウムを含む透明導電膜を資源制約の少ない元素からなる物質を用いて実現する研究開発である。あるいは、高性能熱電変換材料としてタリウム、テルルなどの希少元素を含む材料が報告されているが、そのような元素ではない「ありふれた元素」で高性能熱電変換材料の実現を目指す研究開発である。この考えに沿って本課題では、
@ 希少あるいは貴重な元素を含む材料が発揮する機能を、それらの元素を含まない材料で代替する提案
A 代替が極めて困難な場合、そのリサイクル技術なども含めて、我が国の持続可能な経済発展の礎となる研究
を募集する。具体的には以下に関係した提案が考えられるが、これらに限らない。
・ 白金に代わる水素活性化金属錯体や複合金属系
・ 強磁性体を与える金属元素種の探索
・ 高機能ナノカーボン類の設計/製法
・ 高モビリティー部材の設計/製法
・ 高効率蛍光体の設計/合成
・ 発光系に必要なワイドバンドキャップ金属酸化物材料の探索
・ 高効率熱電変換材料
選考では「環境や安全への配慮」が十分になされており、「有機材料・無機材料といった既成のカテゴリーにとらわれない、応募者自身のオリジナルな発想に基づく、ユニークな提案」であることを重視する。すなわち、既知の方法で確実な成果が予想される研究よりも、応募者本人のアイデアによる挑戦的な提案で、将来の新化学の芽になることが期待できる研究を優先する。
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| 課題6: |
IT、オプトエレクトロニクス、ナノテクノロジーなどを用いた次世代情報端末に
有用なデバイス・材料の創製および製造プロセス技術に関する研究 |
近年、電子情報分野におけるデバイスの微細化、高集積化、高速化技術は成熟期を迎えつつあり、Siテクノロジーに依存しない情報端末機への期待が高まっている。さらに、環境、エネルギー、食料から医療におよぶ広範な社会の課題に対する解決策として、新たな技術革新によって情報端末機器を社会の様々な分野に活用し、浸透させることが期待されている。
そこで、本課題では、次世代情報端末に有用な多様な機能を有するデバイスや構成する多種多様な物性材料の創製およびこれを安価で大量に供給する製造プロセスの革新につながる下記の具体的な3つの課題に対する提案を期待する。
1)紙やプラスチックフィルムのように薄く、軽量で自在に曲げることが可能なディスプレイ、
薄膜二次電池、キャパシタなど多様な機能を有するデバイス
2)次世代情報端末に有用なデバイスを構成する有機・ポリマー材料、透明酸化物、金属ナノ粒子、
CNT(カーボンナノチューブ)など従来のSiや希少金属に代わる多種多様な物性を持つ材料
3)Siプロセスのような高温や高真空、フォトリソグラフィーを用いるプロセスに代わる印刷技術などの
低コスト、低環境負荷の新しいデバイス作製技術
本課題では、電子ペーパーやシートディスプレイ等の次世代ディスプレイやフイルムバッテリーなど情報端末への応用が期待される新規電子・光機能デバイスの創製や、印刷法などにより低エネルギー、低環境負荷で製造を可能にする材料やプロセス技術の開発につながる革新的研究テーマを期待する。なお、太陽電池については課題3に応募願いたい。
| 課題7: |
MEMS技術を用いたナノバイオ分野ならびエネルギー・環境分野における新たな機能を有する材料研究または新たな機能を発現するデバイスに関する研究 |
半導体の微細加工技術を駆使して作製される微小な部品から構成される電気機械システムであるMEMS(Micro Electro Mechanical System)は21世紀の基盤技術として注目されている。例えば、以下のようなさまざまな分野において新たな機能を発現するデバイスの研究されている。
ナノテクノロジーやマイクロマシニング技術によりアクチュエータやセンシング素子などの機械素子を作製し、これを集積してすることによって光スイッチ、加速度センサ、ディスプレイ素子などのマイクロデバイスが研究開発されている。
ナノバイオ分野においては、ナノスケールのデバイスを利用したDNA解読デバイス、臨床診断デバイス、細胞を利用した創薬研究デバイスなどの研究・開発が世界的に活発になっており、バイオメディカル分野への産業応用も研究されている。
エネルギー・環境分野においては振動エネルギー(歩行、橋梁)、光エネルギー(照明、室内日光)、熱エネルギー(体温、廃熱)、電磁波(放送波、電波)といった微小な環境エネルギーを電気エネルギーに変換する環境発電(エネルギー・ハーベスト)技術として、MEMS技術を用いた圧電素子、太陽電池、熱電素子、電磁誘導などの小型デバイスの研究がされており、あるいは小型デバイスとして利用可能なその他の原理を用いて、発電した電気エネルギーをその場で蓄電するための小型のバッテリー(マイクロバッテリー)についてもMEMS技術を用いた応用研究がされている。
製品開発を進める上で加工技術と共に基盤技術として重要な位置付けにあるのが材料である。MEMS技術で扱われる材料はセンシング機能、構造体、または加工時におけるプロセス材料として用いられているが、現状製品のさらなる特性向上や、新たな機能を有する材料が要求されている。
上記の背景の下、本課題では、MEMS技術を用いた分野、例えばナノバイオ分野ならびエネルギー・環境分野において新たなデバイス機能発現に必要な材料研究、または新たな機能を発現するデバイスの研究を募集する。対象としては新たなデバイスの研究であれば既存材料を利用したものでもよい。
課題8: 生体分子を新規な機能性材料として実用化することを目指した研究
ライフサイエンスの産業利用は長らく医薬品・医療分野と農業・食品分野に集中して発展してきており、広範な機能性材料を提供する化学産業での利用は限定的であった。このひとつの理由として、分子生物学や構造生物学においてなされた目覚しい進歩が材料科学と十分な接点を持たなかったことがあげられる。しかし、近年生体分子が持つ自己組織化能を利用する研究が盛んになっており、例えばDNAをフィルムやワイヤーやケージといったナノ素子に加工することによって、興味深い特性が見出されている。また蛋白質については、ウイルス外被蛋白質を人為的に再構成してドラッグデリバリーシステム用の微小キャリアとして利用する研究が行われている。その他にも糖、脂質、ペプチドなど種々の生体分子によって作り出される規則的な構造物を、バイオマテリアルへの用途はもちろんのこと、本来の役割とは全く異なる場面において用いようとする試みが数多くなされている。これらの生体分子を基に、立体構造情報やゲノム情報を参考にしながら、化学修飾や遺伝子工学的改変、あるいは複合化の技術を組み合わせることによって、天然にはない新規な機能性材料を設計することが可能になりつつある。
上記のような技術的背景を考慮し、本課題では生体分子を新規な機能性材料として実用化することを目指した独創的な研究を募集する。特に産業利用に必要な材料特性を考慮し、それを実現するようなアイデアあるいはアプローチが提示されることを期待する。なお、生体分子の合成方法としては生合成、有機合成、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも良いが、機能素子としては生体に特有の分子、あるいは人工的な生体分子アナログを用いることが望ましい。
課題9: 代謝工学による物質生産プロセスの高度化に関する研究
生物のゲノムをダイナミックに改変して有用な細胞を創り上げる合成生物学(synthetic biology)が、近年脚光を浴び始めている。生命現象を包括的に理解しようとすると同時に、新たな代謝系を創製し、医薬品やバイオ燃料を効率よく製造するための技術として期待されている。ゲノムを人工的に構築して細胞そのものを再構成しようという動きや、既存の生物の多数の遺伝子やゲノム全体を遺伝子工学を駆使して改変する手法が主流であり、「生命の指令書をゼロから書き上げ、それを既存の生命体に加えて元の指令書と置き換えている」と説明する専門家もいる。
このような潮流の中で、産業上の価値がある化学物質を生産する代謝工学技術が注目されている。特に代謝物質の網羅的解析(メタボローム解析)技術が現実のものとなり、表現型として発現していない形質の解析手法が増え、他の「オーム」解析やコンピューターシミュレーションを組み合わせることにより、これまでにない知見が効率よく得られるようになった。さらにメタゲノム解析等から膨大な遺伝子資源が入手可能となっており、これらを組み合わせた研究も進んでいる。
そこで本課題では、生物の物質代謝機能や経路を改良し、さまざまな化学物質を効率よく生産することを可能にする提案を募集する。対象とする物質は、バイオ燃料やポリマー原料のみにとどまらず、高機能化学品や生理活性物質も含めた幅広い物質であり、本課題で募集する提案は特に、新規遺伝子資源の利用や進化分子工学の活用による画期的な細胞機能の高度化に関する研究を期待する。
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