近年、有機・高分子薄膜に電荷を注入することにより発光する電界発光(Electroluminescent: EL)素子または発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)が注目を集めている。これは、正孔輸送層(TPD)、電子輸送層および発光層(Alq3)を、透明電極としてのインジウムを添加した酸化スズ(ITO)基板と金属電極ではさんだものである。電極から正孔と電子を有機層に注入し、発光層で再結合させることで発光を得るものである。正孔輸送層(HTL)および電子輸送層(ETL)に低分子を用いる場合は真空蒸着が、高分子を利用する場合はスピンコートやインクジェット法により製膜されている。有機EL素子の応用としては、主にその自発光性を利用したフルカラー・ディスプレィが考えられている。すでに日本、韓国、オランダ等のメーカーから、携帯電話やデジタルカメラの小型ディスプレイが市場に供給されている。このディスプレィは、数十μm幅の画素(ピクセル)ごとに赤(R)・緑(G)・青(B)の発色素子を並べ、液晶ディスプレィ(LCD)と同様に個々に薄膜トランジスタ(TFT)で駆動するものである。最近では、より高効率化のために蛍光色素に代わって燐光材料を、ディスプレイの駆動回路を有機半導体トランジスタ(TFT)により構成するフレキシブルなディスプレイやICタグを目指した研究が進んでいる。一方、有機半導体や導電性高分子を用いた有機薄膜トランジスタ(Organic Thin Film Transistor: TFT)の研究も注目されている。有機・高分子材料の半導体特性は、材料探索や純度・構造制御により飛躍的に移動度が向上しており、今や、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor: FET)構造を用いることで非晶質シリコンと同程度(移動度μ: 0.1 - 1 cm2/Vs)が達成されている。現在は、ゲート電極および絶縁層としてシリコン・ウエハーおよびその酸化膜が利用されているが、基板としてプラスチックを、絶縁層として高分子系を用いることで、耐衝撃性に優れ、薄くて軽い電子デバイスの作製が期待され、印刷法等の大面積かつ低消費電力での製造プロセスを用いることで新たな市場展開を狙った開発研究が始まっている。また、p型またはn型半導体特性を示すポリビニレンフェニレン誘導体(MEH-PPV)およびフラーレン(C60)の積層構造は、シリコン太陽電池と同様に光電変換特性、すなわち太陽電池となる。C60にアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングすると、金属または超伝導になることが知られているが、MgのみがC60の半導体特性を飛躍的に向上させ、太陽電池としての特性も向上した。有機半導体の特徴(表1)を活かし、次世代のディスプレイおよび電子・光デバイスの開発が、まさに始まっている。本講演では、これらのフレキシブル・プリンタブル・プラスチックデバイスとしての有機エレクトロニクス・フォトニクスの最近の研究開発の状況を紹介する。
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