我々のグループは、一連のタリウム化合物が極端に低い熱伝導率を示すことに、世界に先駆けていち早く着目し、その熱電特性の系統的な研究をすすめている。注目すべき熱伝導率の値は、0.5 Wm-1K-1程度あるいはそれ以下を示すものもあり、これは一般的な熱電材料の3分の1以下である。この驚異的に低い熱伝導率ゆえに、ある種のタリウム化合物は、非常に高い熱電性能指数(ZT)を示す。その代表的な物質群が、銀−タリウム−テルル三元系化合物群である。銀−タリウム−テルル三元系化合物群の中でも特に、Ag9TlTe5は非常に高いZTを示す。その値は、650 K以上で1を超える。これまでに多くの熱電材料が研究されてきているが、いわゆる多結晶体のバルク状試料でZT>1を示す物質は、Bi2Te3 やZn4Sb3、フィルドスクッテルダイト化合物など、非常に限られているのが現状であることを考えると、Ag9TlTe5でZT>1が達成できたことは、近年のバルク熱電材料の開発歴の中でも特筆すべき事柄であるといえる。本講演では、Ag9TlTe5に代表される一連のタリウム化合物の熱電特性をレビューするとともに、これらの物質群において観察された「極端に低い」熱伝導率の発現機構を考察する。
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