我々動植物の生命維持に使用される生体物質は、DNAを初めとして蛋白質・酵素は巨大高分子である。しかしながら、DNA損傷、酵素の触媒作用は分子全体ではなく一部で(局所的に)生じる。酵素には、遷移金属原子を含む場合が多くその金属原子が触媒作用に重要な役割を担っているが、反応機構が十分に解明されているとは言い難い。遷移金属原子が反応系に含まれてくると、通常の有機化学反応系と異なり、狭いエネルギー幅に、種々のスピン状態が生成しかつ同じスピン状態であっても異なる電子配置が存在する等多くの電子状態が錯綜してくる。さらに、スピン分極による Broken Symmetry解が重要な役割を担う場合も多い。金属酵素の反応機構解明には、まず、電子状態を的確に表現することが第一要因である。本講演では、1電子酸化によるDNAの損傷機構への計算化学の応用、酸素分子を水分子に4電子還元する反応を触媒する電子伝達系最終酵素であるシトクロムc酸化酵素の触媒機構と分子内電子移動、水分子を酸素分子に変換する光化学系IIのMnクラスター活性部位モデル構築、加えてBroken Symmetryの解等について計算テクニックを含めて紹介する。

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