空気中を漂う微量な分子、多くはVOC(揮発性有機物)を高感度で簡便に検出できる化学センサーが開発されれば、環境モニタリングや医療応用等、将来多くの応用分野が開けると期待している。これまでもガスやアルコールのセンサーとして、酸化物半導体を用いたMOSセンサー、またこれらを組み合わせた「においセンサーシステム」が使われているが、高感度に検出できる分子が酸化還元性のガス等に限定されていたため、広い応用には不向きであった。このため当社の提案によって、産業技術総合研究所との共同研究によって「トップダウンMEMSにより作成したマイクロ振動子」、信州大学繊維学部との共同研究によって「ボトムアップナノテクを用いた分子認識膜」を研究開発し、これを組み合わせた集積化化学センサーの研究開発を3年前からスタートさせた。具体的には、分子認識膜をトランスジューサであるマイクロ振動子の上部に成膜し、吸着した分子の質量を検出する。分子認識膜は、自己組織化ナノテクを用いて分子設計され、各種VOCにたいする吸着選択性を持たせてある。現在までに、ポリブタジエンを中心とした共重合高分子、ポリマーブラシ、フタロシアニン等を検討した。 またマイクロ振動子は、MEMSプロセスを用いて自己重量を極めて小さく出来ることから、高感度のセンサーが可能となる。さらに将来の集積化にも有利である。現在までにマイクロ振動子は、カンチレバー型やディスク型振動子を試作し、その基本機能を確認している。さらに、感度と分析能力を上げるためにカーボンファイバーを用いた濃縮管や分析菅を試作し、作成したマイクロ振動子と組み合わせて基本的な機能を確認している。加えて、将来の集積化に備えて機構部を持たないマイクロメカレスポンプも研究開発している。まだまだ実用化までの道のりは遠いが、当日は全体のコンセプト、これらの研究開発の進捗状況と課題を報告する。
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