演者らは細胞膜表面構造に着目したプラットフォームポリマーの創製を行なってきている。これは、細胞膜を構成している成分の一つであるリン脂質の極性基を側鎖に担持したポリマーである。特に、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を一成分として有するポリマーは分子設計のしやすさもあり、様々な特性を付与することができる。そのために長期に生体内に埋め込む医療デバイス、人工臓器の表面修飾にも利用されている。MPCポリマーの特徴の一つとして、分子設計が可能である点があげられる。重合性も良いために、必要な機能を入れ込むことが可能である。例えば表面修飾する基材に対する親和性、安定性を高めるためのユニットとして、疎水性の官能基や、アルコキシルシリル基、芳香族アジド基の様な反応性基を持つモノマーと共重合することができる。また、表面電荷の制御を目的として、スルホン酸やアンモニウム基のような荷電も持つモノマーユニットの導入も容易である。このように多種多様な表面を持つポリマーマテリアルは、バイオデバイス創製において大切な役割を担っている。表面への修飾法として、ポリマー溶液からのコーティング、表面からのグラフト重合、基材へのブレンドなどが挙げられる。いずれの表面処理法もバイオデバイスの創製には利用することが可能である。しかしながら、ナノスケールでの分析や解析を行なうことを考慮した場合、表面の状態を限りなく制御しておくことは必要と考える。すなわち、従来の統計的な表面創製ではなく、限定された構造を作り上げることが求められる。近年、ポリマーの合成法として、リビングラジカル重合法が進歩してきた。これは、ラジカル重合で合成されるポリマーの欠点であった分子量と分子量分布の制御とが行なえる方法であり、構造明確なポリマーを合成することができることを意味する。また、さらなる特徴としては、いったんあるモノマーを重合した後、異なるモノマーを添加することによりさらにポリマー鎖の伸長反応が起こるために、ブロック型ポリマーの合成も容易にできる特徴も持つ。MPCポリマー鎖の密度と長さを制御した表面の構築に成功している。この表面に対するタンパク質(フィブリノーゲン)の吸着量は、MPCポリマー鎖の密度、及び長さの両方に影響され、高密度で、長いポリマー鎖であるほど吸着を抑制することがわかった。この時の吸着量は、2ng/cm2以下であり、通常の基材表面の約1/1,000となる。このような表面を利用することにより、はじめて正確なサブμgオーダーの分析が可能となる。
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