メタシクロファン-1-エン類は、異なる波長を持った光の照射によって可逆的に構造を変化させる、「有機フォトクロミック化合物」である。有機フォトクロミック化合物は、近年、分子光メモリーが注目されて以来、精力的に研究されてきた。その中でもメタシクロファン-1-エン類は、高い光反応量子収率(高効率な光反応)、光反応に伴う分子ボリュームの変化が小さいこと(限定された空間における光反応が可能)から、光メモリー材料として有望であると考えられている。ところで、光によって書き込みができ、光によって消去が可能な有機フォトクロミック化合物を用いた光メモリーは、吸収スペクトルによって記録の「読み出し」を行うと、分子を再励起してしまい、光反応が再度進行することによって形成した光メモリーが破壊される。そこで我々は、両光異性体が吸収しない波長の光を用いることによって、非破壊読み出しが可能なメタシクロファン-1-エン類に注目した。これらの新規化合物は、分子内に鏡面を有しないことから、光学活性を有する。光学活性体は旋光度を示すが、これは吸収しない光の波長でも変化が観測されることから、非破壊読み出し法となり得る。メタシクロファン-1-エン類は、光学活性体の間を100%立体特異的にフォトクロミック反応を行う、初めての化合物であることを我々は見いだし、この方法を用いた分子光メモリーの構築について講演する。一方、屈折率変化は、同様に吸収しない波長の光で測定できることから、もう一つの非破壊読み出し法として注目されている。我々が開発したメタシクロファン-1
-エン類は、ポリマー媒体中、フォトクロミック反応に伴って屈折率も大きく変化することが見いだされており、これについても報告する。

閉じる